少年警察官

小学4年の頃、クラスに「大山」という奴が転校してきた。
彼は人見知りしないタイプっぽく、たけちゅうも、遊び相手が増えたとばかり、そいつとすぐ仲良くなった。

彼が転校してきて数日後。大山はたけちゅうに、改まってこう話しかけてきた。
「お前にだけは言うけどな、...オレ実は、少年警察官やねん。」
少年警察...?? 大山の言うには、彼の家は警察官一家で、実は彼の家族は、とある暴力団の秘密捜査のためにこの街に引っ越してきた、のだそうだ。
あと、少年警察の存在は、一般的には秘密になっているらしい。
さすがのたけちゅうも「ウソつけ!」と疑った。少年警察官なんて、古のギャグマンガ「がきデカ」でしかお目にかかったことがない。 だが彼は真剣だった。「誰にも言うなよ。たけちゅうにだけは喋るけどな。」あんまり真剣なので、半信半疑ながらも「うん、わかった。」と返事しておいた。

数日後の学校。どんなやりとりだったかは忘れたが、大山は、胸ポケットから紙切れを出し、「あ、しまった!」と、すぐに紙切れを隠してしまった。紙切れには、衣服のスケッチが書かれていて、たけちゅうが「なんや、その服の絵は?」と聞くと、
「...これな、被害者の衣服の特徴やねん。」
またも真剣な顔で大山。子供たけちゅうは”うわ、ホンマに少年警察なんや。”と思った(苦笑)

その後も大山は、”少年警察官っぷり”を、遺憾なく発揮してくれた。
一緒に道を歩いてると「危ない!」と言って電柱に身を隠し、「...あそこの家な、暴力団の家や。こっち偵察されてる。」とか言ってみたり。(たけちゅうが不安がると、「オレおるから大丈夫や」と、頼りがいを発揮してくれた(笑))、 ある時は、「オレの家は、全員警察官やから、空手やってるねん。オレは10枚しか瓦が割れんけど、お父さんは30枚、お母さんは25枚割れるんや。」と聞かせてくれた。 (瓦30枚ぶんて、どれくらいの高さになるんやろ?(笑))

かように大山は、小学4年生には「リアルなうそ」を山ほど聞かせてくれた。一部しか思い出せんのが残念だが、なんで大山が、こんなに一所懸命ウソをついていたのか、今となってはよくわからない。

後日級友から、「大山はウソつきや。”瓦割る”いうから見に行ったら、よそ見してる時に足で割ってた」と聞いて、「少年警察って、ウソか?」「いや、秘密がバレんように”10枚割り"は見せんかったんか?」と、両者の間で非常にモヤモヤした。

少年警察官かぁ−−−小学生男子の冒険心をくすぐるやないですか(笑)大山自身は「早熟な中二病」だったのかもしれないし、たけちゅうも、日常に刺激が増えて、担がれて満更でもなかったかと思っている(苦笑)

数ヵ月後に、今度はたけちゅうの方が転校してしまったため、大山のウソに最後まではつきあえなかったのだが、もしそのまま転校せずにいたら、少年警察官っぷりがどこまでエスカレートしていたのか、それが知れなかったのが心残りだ(笑)

名古屋のほうに「犬山」という地名がある。字が「大山」と似てるので、地図で犬山を眺める度「あの大山はどうしてるんやろ?」と思い出し、近況を知りたい衝動に駆られる。
('15 1/16 執筆 たけちゅうlogより再掲)