異臭No.1

(2002年 12月 執筆)
 こないだ、信じ難いニオイを嗅いだ。

 会社の昼休み、満員御礼のWC個室。しかたなく別フロアに移るが、そこも満室。
 しかし丁度、そのフロアの某N先輩が事を終えて出てきたので、ひらりと入れ替わりでたけちゅうが入る。
 と、・・・
  「ゲエッ?!」
 鼻をつく物凄い悪臭! ニオイの質・強さ、どれを取っても申し分なし。 「悪臭とはこういうものだ」という、まさにお手本のような臭気である。
 WCの残り香だとはいっても、いくら何でもこれはひどすぎるではないか!

 「臭っ!」と、すぐさま扉を開けて個室から出たかったが、当のN先輩は洗面所でお昼のハミガキ中である。
 そんな事をすればカドが立つ。ここを立ち去るとしても、この場所でしばらくガマンしなければならない。

 異臭漂う個室で耐え忍ぶたけちゅうの脳裏に、さまざまな思いと疑問が去来する。
  ”自然界に、こんなニオイが存在し得たのか?!
   そもそも、一体何を食ったらこんなニオイが出せるねん?”
 やきいも、カボチャ、ピーマン・・・頭の中で、元凶となり得そうなありとあらゆる食べ物を検索するが、これほど遺憾なニオイの結果となりそうなものは、人間の食べ物の中では思い当たらない。
  ”しばらく我慢すれば、ニオイも飛散するだろうか。”
そう思って、呼吸を止めてしばらく耐えてみたが、この悪臭、一向に収まる気配がない!
 息を止めるにも限度がある。「ぷはぁ〜」と息を再開すると、それまで以上に臭気が鼻腔にこびりつく。口だけの呼吸で茶を濁そうとしても、悪臭は肺の奥深くに入り込んで来る。
 このニオイ、もしや、便器や壁にへばりついているのか!? いや、たけちゅうの衣服にも、一刻一刻と染み込んでいってるかも?! と、そんな危機感すら抱き始めた。
 そもそも人の子が放っても許される臭いを逸脱している。もはや公害、もはや犯罪、もはや毒ガスだ。
 普段より酸素が少ないような気がする。目の前が山吹色がかったような錯覚すら覚える。
 臭い。息苦しい。おお神よ、何でワシがこんな思いをせねばならぬのか?!
 うっ・・うぷっ・・オエっ・・・
 ”も、もうアカン! これ以上は無理や!”

 バタン!
 咳き込むのをガマンしながら、ほうほうの体で個室を出ると、N先輩は洗面所でサワヤカに歯をみがいていた。

 たけちゅうが体験した非日常を伝えたくてあれこれ書いてみたが、 結局のところ、あの凄さを説明するのは難しいであろう。
 ”もうN先輩の後にはWCに入らん!”とは当然思うものの、もしかしたら先輩自身も、あれほどハイレベルな臭気を醸造するのは二度と不可能なのかもしれない。
('02 12/2 執筆 たけちゅうwebより再掲)