一匹は、ドロボウ。
たけちゅう家の窓から侵入を試みていた不振な輩。「誰じゃ?!」と叫んだら男は大あわてで逃亡、たけちゅうが「ドロボー!!」と叫んで走りまくったため、警察はもちろん、見物人が大げさではなく100人ぐらい湧いて出てきて、はた目には実にユカイな事態に発展してしまった。
そしてもう一匹は、変質者。夜の路上に出没しては見苦しい物を陳列するという、例の奴だ。
今日は、そんな夏の夜の話である。
大学生になったばかりの頃。たけちゅうと妹は、自転車で競争しながら家に帰っていた。ぶっちぎりのたけちゅう、200mぐらい先で余裕シャクシャクで待ってやってると、妹が後ろから息せき切ってやって来て言うには、
「兄ちゃん! ヘンタイ!ヘンタイ!」
「誰がヘンタイじゃ?!」
いきなりヘンタイ呼ばわりされたと思い、反射的にそう言い返すと、
「ちゃうねん、あれ! 向こう! 丸出し!」
目を輝かせながら、嬉しそうに妹は言った。
見やると、はるか向こうに怪しげな人影がたたずんでいる。ははーん、あれがチマタでウワサの露出狂か。
露出狂には気の毒だが、少なくとも妹は「キャー!」とかいうしおらしいタマではない。むしろ格好のネタがぶら下がっていたと大喜びである。たけちゅう家系なんぞ、そんなもんだ。かく言うたけちゅうも興味しんしんである!
「ちょっと待っとき!」
夜道に妹を置き去りにしたまま、たけちゅうは人影めがけて一目散に自転車をこいだ。こんな珍しいものには滅多に出会えない。露出狂とはどんなツラなのか実に興味深い。急いで行けば、彼の”おたから”にもお目にかかれるやもしれぬと、そんな野望すらも抱いていた。
ところが彼は、ロードレーサーで猛スピードで突進してくるたけちゅうを見て、すっかり驚いてしまったようだ。彼は停めてあったママチャリに大急ぎでまたがり、閉めるべきチャックも閉めぬまま、情けない半泣きの顔で後ろを何度もふり返りながら必死に逃げていった。
あまりの恐れおののきぶりが気の毒になり、それ以上の深追いはやめておいた。妹と離れていたので、まさか兄貴が一緒だったとは思ってもみなかったのだろう。にしてもあの情けないツラ、今だ目に焼き付いて離れない。
とりあえず、露出狂のツラという珍しいものを見ることができた。妹も、見たくともなかなか見れないレアなものにお目にかかれてご満悦なようだった。
「そないにビビって逃げるぐらいやったら、初めから大公開せんかったらええのになー。」至極当然でつまらない感想を語り合いながら、兄妹でゆっくりと家に帰った。
今度は母親が、そのネタを聞いて大喜びする番であった。
'02 9/27 執筆 (たけちゅうwebより再掲)