その中でも「電気工学科」と呼ばれる所は、定員50名中女性が1名と、暑苦しさも格別であった。
さてそんなダークグレーな場所にあえて入学して勉学にいそしもうなどという女子は、相当に濃いキャラであることは想像に難くなかろう。入学当時、クラスで唯一の彼女は、ボーイッシュとかいう範疇をはるかに逸脱し、それはそれは男な女性であった。
今日は、そんな彼女の話である。
彼女は、服も髪型もメガネもいでたちも完璧な男性コンパチブルで、入学式の記念写真などでも「この中で誰が女性か?」を言い当てるのは至難であった。その上ややこしいことに、彼女は持ち前のハスキーボイスで自分の事を「オレ」と呼び(!)、その性別の区別をより困難なものにしていた。
たけちゅうが顔をしかめたのは、当時の彼女はとにかく不潔だったことだ。大粒のフケを頭にこびりつかせてる様を見て、たけちゅうは心の中でこっそり「ふけつNo.1」などとつぶやいてたものだ。
しかも彼女は柔道二段という本格的な武闘派でもあり(!)、そのうえ探検部という、これまたファイト一発なものに所属していた。
一度など、クラスに体育会試合の観戦宣伝に来た応援団連中が、「このクラスは、女性がいなーい!!」などと、まさに目の前に鎮座する彼女の前で絶叫・断言して、クラス中が大爆笑になったこともある。
見た目も心も、彼女はヘタな男より、余程男であった。
だが、そんな彼女は、とある理由で変わっていった・・・・
最初にたけちゅうが「?」と思ったのは1年生の秋。ある日彼女は、唐突に帽子をかぶってきてたのだ。いかにも女性っぽい可愛い帽子、ジーパンと運動靴には不釣り合いな荒削りな風貌ではあったが、彼女が女らしいオシャレをしたいという努力は間違いなく感じられた。わずかではあるものの初めて”女性”を感じさせる彼女を見て、たけちゅう、”結構悪くはない”と思ったのであった。
しばらくして、彼女が「クラスのとある男子を好きになった」ことを、風のウワサで耳にした。なるほど、彼女の変身を説明する、十分合点のいく理由である。2年生になった頃の彼女は、もはや自分の事を「オレ」などとは呼ばず、彼女がその意中の男子と雑談している時は、それはもう屈託ない、普通の女の子の可愛い表情をしていた。
3年生の頃には、時々スカートをはいた彼女を目にすることができた。ボーイッシュで快活な女性、という感じで、オレだのフケだの男くさい面影は、もはやどこかに消え失せていた。
彼女のその恋の行方がどうなったかは、たけちゅうの知るところではない。しかし4年生になった頃、彼女は探検部のツテで、京大のカッコイイ彼氏ができたという話を耳にした。
理系丸出しな工学部をキリリとかっ歩する彼女は、それはもう凛々しく、魅力的だった。そうして見ると、実は元々顔立ちも整った人だったのだ。学生の本分であるところの勉学も優秀で、「Kさん(彼女の名前)かっこいいね。」クラスの友達と、時々そんな話をしたものだ。
彼女は、見事、変身したのだ。
人間、変わろうと思えば変われる。変わりたいという心がけ次第である。彼女は、そんなことを具現化して見せてくれたような気がする。
彼女はすごい人だと思う。オトコオンナという当初の意味とは全く違う意味で、彼女はとても「かっこいい」人であった。
('02 5/4 執筆 たけちゅうwebより再掲)